(第41本目)リンダキューブ3 完全版

RPG サターン MARS 1998年



〜何の続編?〜

 今は昔(笑)、PCエンジンというゲーム機でリリースされていたRPGに「天外魔境」というシリーズがありました。リリース当時は多くのユーザーに感動を与えたゲームであり、もちろん、筆者も天外魔境シリーズはお気に入りであります。

 そして、天外魔境のシナリオライターが、シリーズの合間に製作していた作品に「Linda3」(リンダキューブ)があります。
 Linda3はあまり売れなかったのですが、その事が天外魔境シリーズにとって、大きな意味を持っていたことは、当時のマニアなら苦い記憶が残っているのではないかと思います。
(ご存知無い方のために補足すると、Linda3がPCエンジンで売れなかったため、PCエンジンでは採算が危ういと判断され、「天外魔境3」の製作がストップした経過があります)

 さて、ゲームが売れない一般的な理由は「ゲームそのものがつまらない」という、身もふたも無い理由が殆どでありますが、Linda3はどのようなデキだったのでしょうか?
 Linda3については、PCエンジンではヒットしなかったものの、次世代機のプレステに移植版がリリースされ、そしてサターン版は“完全版”の触れ込みがついてリリースされています。

 つまらないゲームを、わざわざ2機種の次世代機に移植する事はありえるのでしょうか?
否、リンダキューブは面白い。筆者は個人的にそう思うのであります。

 今回は、原作のPCエンジン版でなく、あえて“完全版”と銘打たれたサターン版をご案内します。

〜ストーリー〜

 時代は、AMD1991年夏。惑星ネオ・ケニアに、通称「死神」と言う直径200qの惑星サイズの隕石が迫っていた。衝突時期は、1999年夏。残された日数は、わずか8年。連邦政府による必死の移住計画が進む中、突如、未知の生命体「アナビス」からメッセージが届く。


「この星の動物をひとつがいずつ集め、他の星へ逃がして欲しい」と。そして、脱出用宇宙船「箱船」が人類に贈られた。この突拍子も無く確実性も安全性も無い「箱船計画」にこともあろうに連邦政府はGOサインを出す。
 やがて、箱船の乗務員として、人類という種の雌雄として、若き男女各1名が選出された。そして今、この困難な使命に挑むふたりの冒険が始まる…。


 でも、あなたは救世主でも勇者でもありません。魔王もいません。隕石「死神」を止めて世界を救うこともできません。8年後、惑星ネオ・ケニアは絶対に滅びます。あなたに出来ることは?そう!出来るだけ多くの動物を捕獲して箱船に乗せ、この星から脱出することだけなのです!

〜ちょこっとゲームリプレイ〜 


 その日の朝、昔の夢をみた。家の隣に済んでいた幼馴染のリンダとの会話を。かつて人類の発祥の惑星と呼ばれる星、地球の事。そして、リンダとの結婚の約束。遥か昔に過ぎ去った幼い日の思い出。

 俺の名は“ケン”、惑星ネオ・ケニアの動物を守るレンジャー部隊に所属している。神様からという謎のメッセージを受け、今日はレンジャー隊から男の乗員の志願者を募る日だ。

 そして、俺は箱舟の乗員に立候補をするつもりだ。

 俺の父もレンジャーだったが、数年前に他界している。たった一人、母さんを残して、行き先もわからない箱舟に乗り込むのは……俺は、母さんに決心を打ち明けることにした。

「男の乗員が、まだ、決まってないんだよ…それで俺さ…」
口ごもる俺に母さんが微笑みながら声を返す。
「ケン!あんた、わたしの事を考えて迷っているようなら大バカ者だよ!
 たった一回こっきりの、あんただけの人生なんだ。好きなようにおやり」

 自分の事しか考えていない俺に、励ましの言葉をかけてくれる母さん。俺は、心の中で謝った。


 あわてて俺はレンジャー隊本部に駆けつける。今日は朝から大事な話をしていて遅刻したのだが、普段から朝寝坊しているので、みんなにとってはいつものことだ。
 走って会議室へ、早速、レンジャー隊隊長の司会のもと、会議が始まった。

 8年後にこの惑星、ネオ・ケニアに衝突する隕石“死神”の説明、そして、箱舟の女の乗員として立候補し、見事当選した人物の紹介がされる。

 その女の乗員とは……そう、幼馴染のリンダだ!
水着姿で映し出されるリンダの映像に、周りの男どもから何ともいえないどよめきや、口笛が飛ぶ。そう、男の乗員は、箱舟が出発した後、リンダと二人きりで未知の世界に旅立つようになるのだ。


 隊長“ベン”の説明が淡々と続く。リンダの簡単なプロフィールの紹介、そして、今日決定された箱舟の男の乗員は、リンダと協力しながら、惑星ネオ・ケニアの動物を一つがいずつ生きて捕獲すること。加えて、箱舟にリンダと一緒に乗り組み、リンダと一緒に未知の世界へ旅立つこと。
 そのとき突然、映像が切り替わり、スタッフを殴り倒すリンダの画像が表示されてしまう。

 どうもカットされる部分が表示されてしまったらしい。何か失敗したスタッフを殴り倒した後、他のスタッフの静止の甲斐なく、更に素足でスタッフの顔を踏みつけるリンダが表示されてしまう。
 その状況を見ていた周りの男たちの表情が凍る。そう、もし箱舟の乗員となってしまったら、このリンダとずっと一緒に生活することになってしまうのだ。
 会議室の中はぴたっと静かになった。

 静寂の中をベンの声が響く。
「箱舟の乗員として、我と思わん者は手元のボタンを押してくれ!」
周りのレンジャー隊メンバーの視線が痛い。そう、みんな俺とリンダが幼馴染だと知っているのだ。


 結局、俺はボタンを押し、見事、立候補者1名で箱舟の乗員として当選した。
そう、たったボタン1つで今後の人生を決定してしまったのだ。
何ともいえない感覚に、ふらふらとしながら、レンジャー隊本部の廊下を外に向かう。
その時だ! 「ケンっ!スキありっ!!」

 いきなり後頭部を棒で殴られ、俺は壁に顔から吹っ飛ばされる!

 壁に叩きつけられた痛みのあまり、口も聞けない俺に、元気の良い声が掛かる。
「ケンっ! あんた女のワタシより弱いってどういうことっ!?」
 リンダだっ!


 気が遠くなりそうな俺に、更にお怒りなご様子のリンダの声が飛ぶ。
「ケン、わかったわね!3レベルよ!! それまでは絶対っワタシに近づかないでよね!!」
そのまま廊下を去っていくリンダ…

 と、思ったら、俺の傍に引き返してくると、優しい顔で、
「ケン! 志願してくれて ア・リ・ガ・ト(チュッ)」
そして小走りで、出口へ去っていく。

 ……さて、リンダは隣街の“ミサゴ”に住んでいる。本当ならリンダと二人で動物を捕獲するはずだが、リンダからは“3レベル”という宿題を出されているので、一人で動物を探す……北に何かいるぞ!?


“ブタ”を発見!早速捕獲だ!! さっき街で購入した猟犬2匹と連携して獲物を狙う!
余裕でブタを捕獲すると、そこはリンダが住んでいる町“ミナゴ”の近くだった…

(「まだ3レベルになってないけど…まぁ、いいか」)
早速リンダの家に行ってみると、そこでは母親と花嫁衣裳合わせをしているリンダが……
ふとこちらを向いたリンダ。俺を見ると嬉しそうな表情で席を立つ。
「ケン!迎えにきてくれたのね!!」

 俺の目の前に走り寄って来るリンダ、そして……嬉しそうな表情が、段々と…変化…していく………
静かに、そしてドスの効いた声でリンダが言った。
「もう一発 殴られたい?」


 あわててリンダの前から退散した俺は、2匹の猟犬と一緒に何種類かの動物を捕獲し、何日かしてようやくレベル3になった。その時、俺の携帯電話に留守番コールが…、誰だろう??

 町の入り口にある電話機で留守番コールを聞いてみると、それはレンジャー隊隊長のベンからだった。
「おまえがこの電話をどこで聞いているか知らんが、今すぐホスピコへ行け!
 リンダが……リンダがな……とにかく行け!
 ……ケン、何があっても気を確かに持つんだぞ!

 ホスピコといえば、大きな病院そのものが一つの町になっているところだ。そこにリンダが…!?
いったい、リンダに何が!?

※ストーリーを分かりやすくするため、イベントの順番を若干変更しています。どれが違うかわかったらマニアだ!(笑)

〜思い出〜

 RPGというゲームジャンルにおいて、プレイヤーを楽しませる要素とは何でしょうか?
最初はザコ敵と、やっとこ戦う弱っちいキャラクターを、感情移入しながら少しずつ育てる楽しみでしょうか?
 そして、“普通のRPG”と呼ばれるのはどんなゲームなのでしょうか?
世界を救う壮大なストーリーを楽しむものなのでしょうか?
(ありがちなRPGを批判している訳ではありません。ひねりすぎて自分の頭では理解できないストーリーのゲームよりは、ありふれたストーリーの方が面白いと思います。オチが予想できて安心しながらプレイできますし(笑))

 本作リンダキューブ”は筆者が定義する、普通のRPGに区分できない作品です。
大前提として、主人公が住む惑星(世界)は8年後に滅びます。
 一般的なRPGであれば、世界を救うために主人公達は魔王を倒すために戦うのでしょうけれども、このゲームは違います。
 主人公たちの目的は、世界が滅亡する前に、動物一種類につきオスメス一つがいずつを集めること。
そして、世界が滅亡する前に、ヒロイン(リンダ)と一緒に箱舟に乗り込むこと。
(主人公とリンダも人間という種のオスメス一つがいにカウントされています(笑))

 そんなわけで、動物を求めて世界中を冒険するようになるのですが、あくまでも主人公の目的は百種類の動物を集めること。
動物を倒してLVアップして最強になっても、世界は救えません(笑)

 惑星が滅亡に近づくことによって、住民がどんどん他の惑星に脱出していくため、滅亡の時が近づくとショップや、宿屋なども無人になってしまい、せっかくお金を貯めていても使う場所がありません(笑)
 普段は住人たちが住んでいた街が、建物はそのままにどんどん人が少なくなっていく…
思わず(「俺はいい年してゲームなんてやっていていいんだろうか」)なんて不安になってしまいました(笑)
 でも、お店が無くなってしまっても、主人公達の装備は捕獲した動物から加工できるので、お店で定期的に買い物をするのは“傷薬”位ですから、実際はあまり困らなかったりします(笑)

 そして、筆者のこのゲームの一番お気に入りは、やっぱり“ヒロインと二人きりの冒険”でしょうか(笑)
宿屋も無く、店も無い荒野の真中で、猟犬と、ヒロインで孤独に夜を明かす。
 なんとなくワクワクするようなロマンを感じませんか?(エロではなく)


 さて、今回のレビューを書くために、リンダキューブをシナリオA〜Cまで再クリアしてみました。
改めて冷静にプレイしてみると、つくづく細かい所まで作りこみがされている事が実感できました。
○時間制限あることで、だらだらとした展開にならない
○経験値稼ぎをしすぎると、弱い動物が捕獲できなくなるため不利になる場合がある
 (攻撃力が強すぎると捕獲せずに殺してしまいます)
○ラスボスらしきものも存在するが、倒さなくてもクリアできてしまう(笑)

 その気になれば町に帰ることなく、ヒロインと二人、捕らえた獲物から食料を作り、武器などの装備を作り、野宿をしながらゲームを進めることができます。そう、ゴールド稼ぎとは無縁のゲームになります。
 冒険、というものが体験できない(ホームレスなども冒険といえるが、今の生活を崩してまで冒険(?)したくないなぁ(笑))いい年した筆者が語るのもなんなんですが、“憧れ”を感じるゲームですねぇ。



 さて、本作サターン版は、“リンダキューブ完全版”ということで、クリアした後に原作PCエンジン版のグラフィックなどが鑑賞できます。
 でも、それはあくまでおまけですから、入手が困難なサターン版でなく、入手しやすいプレステ版もゲームの面白さは一緒です。
 人付き合いや、仕事など、いろいろなしがらみを忘れ、未知の世界へ冒険したい!
そんな気持ちがある方・まだ残っている方は是非、攻略本なしでプレイしてみるのはいかがでしょうか?

04/09/10

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